着物が好きな人なら、なんで、青森なのにこれが出てこないのか?と思ったり、
ああ、もしかしてって、想像がついちゃったりなんて事もあるのかもしれませんが、
はい、買っちゃったんです。
こぎん刺しの名古屋帯。額縁仕立てにお仕立て済み。
お太鼓はこんな感じ。
なんと美しいディテールでしょうか。
前柄はシンプル。
シンプルと言っても、すごいです。
色みもちょっと変わったかんじで、写真ではあまりわからないかもしれないのですが、
深緑色の麻地に極薄い緑色の糸で刺してあります。
十和田湖のほとりにある
ゆずりはで見つけました。
そう、
2つ前の記事で、素敵な津軽塗のプレートを見つけたお店です。
これはお太鼓柄ですが、ぎっしり刺繍してある六通柄のものもありました。
そちらもとっても素敵でしたが、それだけ厚みも出るし、重くなるということで、
私にはお太鼓柄のこれくらいがちょうどよく、着物もこの方が合わせやすく、
さらにお値段もそのほうがお手ごろでといいことずくめだったのでお太鼓柄にしました。
青森旅行に行く前からこぎん刺しのことは気になっていて、
ガイドブックを見て、きっといろいろ小物類を買ってしまうんだろうなあと思っていたし、
帯があることは知っていたけど、全く買うつもりなく出かけていきました。
着物や帯との出逢いとはそんなものかもしれないのですが。
(探している時はなかなか見つかりませんもの)
でも、ゆずりはさんで見つけたら、思いのほか安く
これなら私でも手に入れることができそうだわと勢いつけて買いました。
こぎんは弘前付近の農村で、1764年、明和の頃に生まれかつ育った異色ある刺しゅうです。昔は自家製麻布を藍で染め、それに白綿糸で刺し、もっぱら衣服に仕立てて着用していました。農村の娘であるかぎり、誰もがみな5,6才の頃からこの刺しゅうを習い、14、5才ともなればひとかどの刺手となり、競って美しいこぎんを刺すため努めました。そうした事情によって発達したこぎん文様が今日、民芸品として最高のものであることが認められ、その応用品が多くの人々によって愛用されるようになりました。
(弘前こぎん研究所のリーフレットから抜粋)
昔は、農民は木綿を衣服として使用するのを禁じられていました。
今は、木綿より麻の方が高価な物じゃないかと思うんですが、昔は逆だったんですね。
厳しい自然のこの土地で、身近な麻布に木綿糸を刺し重ねる事を思いつき、
また、長い冬の間に、美しい図柄を刺す時間があったからこそ発展してきたようです。
しかし、明治の初めに農民の木綿の使用が解禁になり
明治24〜27年には鉄道が発達、木綿の布が手に入るようになり、
大正末から昭和の初めに木綿の絣や手織を着るようになったために廃れてしまったようです。
こんなの素敵なものが、一時は廃れてしまっていたなんて信じられない事です。
昭和7年には民芸の創始者、柳宗悦さんが民芸協会発行の「工芸14号」に「地方工芸の最たるもの」と絶賛。
柳宗悦さんの名前は、以前2回登場していますが、本当に色んなところに出てきます。
織込花莚(おりこみはなむしろ)
鳥取民藝
こぎん刺しの復興には、弘前こぎん研究所が重要な役割を果たしました。
昭和17年、財団法人木村産業研究所内に青森ホームスパンとして始まったのですが、
民芸運動の中で柳宗悦さんらの進めもあり
そこで、材料や模様を集めたり、資料作りをして「こぎん」の基礎的研究をし、
産業化に結びつける努力をしました。
昭和35年、弘前こぎん研究所と改名して現在にいたっています。
今ではお土産屋さんにたくさん並んでいますし、
こぎん刺しの帯もこうして手に入れる事が出来ているのは、柳宗悦さんのおかげですね。
実際に弘前こぎん研究所にも行ってきました。
iPhoneで撮影。写真じゃ伝わらないかもしれませんが、
この建物ができた当時周辺は武家屋敷。そこにあったと思うと、
びっくりのモダニズム建築です。
前川國男が手がけた27歳の実質デビュー作です。
当時のオーナーが留学先のフランスから帰国船で乗り合わせた前川國男に
設計を依頼して建てられたらしいです。口約束で実現するなんてカッコいいですね。
中は、事務所の傍らでこぎん刺しの小物の販売がされています。結構、無造作。
2階は実際、工房があるようです。
予約すれば作業風景も見学可能なようですが、
予約しなかったし、行ってからそれを知ったので見学はしていません・・・。是非次回!
帯もありますか?と聞いたら、1本くらいはあったのですが、種類はなかったです。
色と柄は相談の上、特注してくれるとのことでした。
時間は少しかかりますが、そんなのも素敵ですよね。
よく思い返したら、
きものサロン ’09 秋号 (2009) (家庭画報特選)の「北東北の手仕事を訪ねる」という特集で
稲森いずみさんが締めている帯はこぎん刺しの帯で、
弘前こぎん研究所もゆずりはも紹介されていたことに旅から戻ってから気がつきました。
青森は、ここ近年、青森県立美術館や十和田市現代美術館など気になる美術館ができて、
よく雑誌に紹介されることがあり気になっていたので、一人旅で行ってみる事に。
食べ物はおいしいし、奥入瀬の自然は豊かだし、
美術館は満足だったし、色々とてんこもりの旅行でした。
すっかり青森ファンです。
青森ネタはこれにて打ち止めです。
随分かかってしまいました。すみません。
気がついたらもう10月・・・。